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らの概念からは、浮体の橋と言えば、橋は、通路としての機能を求められるので、横方向に長く、これを満足させるためには、上述のようにポンツーンを連結する構造ぐらいしか頭に思い浮かばないのが通例ではないだろうか。
現地での机上説明と現場視察で判つたことは、Nord horaiand Bridgeは、本報告のなかで詳細に報告されているように、10基の浮体があり、これらは橋脚の機能をはたしており、その上の橋桁は、平面的にアーチ状をした延長1,246Mの連続桁が架けられていて、途中に一箇所の継ぎ手もない。浮体には、係留索はなく、浮体にかかる波力、潮流力、風力などの横方向外力は、連続桁を介してアーチ両端部の2基のアバットで受けの持つ構造である。
構造概念は、アーチ状をした剛体連続桁を所要の間隔で浮体で支持する。横方向外力はアーチ端部の2点で支持すると言う単純な構造である。実に単純なこの構造は、判ってしまえば納得されるが、その発想の奇抜性には脱帽せざるを得ない。
基本概念に基づいた詳細検討では、特に、アーチ両端部の支持の仕方で工夫か凝らされたようすが伺え、かつ、興味深いものがあった。
また、Klauvaskallen側のアーチ端部は海中地盤から立ち上げた独立アバットあるが、それはロックアンカーで海底岩盤と緊結されているため、重力式とは異なり型状的にスレンダーな構造であった。

 

二つ目は、ロッテルダム大規模水門の一見大胆と思える計画である。水路部の高潮防護は、水路に沿う堤防を高くして高潮を防御する方法、水路に水門、ポンプ場を設け高潮を水門で防護し、内水をポンプで排除する方法が一般的である。前者は、河川や大水路で、後者は、小規模水路で用いられることが多い。
この小水路で用いられる水門で単一のアーチ型水門式で採用したものが、我が国では、大阪港安治川河口部に設けられている。開閉は、両端のアーチ支持部を支点としてアーチ中央部を上下させる方式で、平常時は、アーチ部を土にあげ、通行する船舶はその下をくぐる。河川幅員は、約80m程度に過ぎない。
水門式で、ポンプ場なしで計画、設計、施工しているのがこのロッテルダム高潮防御事業である。その規模は本報告書の本文に譲るが、対象水路は、スイスのアルプスに源を発する長さ1,320kmのヨーロッパでも有数の大河川ライン河ならびにフランスでの重要内陸水路となっているマイン河に接続し、北海からヨーロッパ内陸への水運の玄関口となっている新水路(New Waterway)である。
ロッテルダムの水門は、幅員360mの新水路を中央部で結合する二基のアーチ型構造物(一基のアーチ部長210m高さ22m)で仕切る超大水門である。それぞれのアーチ型構造物(水門)は、平常時は、両岸におのおの格納されており、異常時には、それぞれが水路中央部に水平方向に横移動して、合体し、堰となって高潮を堰き止める。
これまでの常識を逸したこの計画は、河川計画流入量の時間的特性、計画高潮位の時間的特性、さらに、河川の堤防高を基礎条件として、実現性、経済性を綿密に検討した結果から生まれた計画であろうと思う。
それにしてもその計画の大胆さには驚きを禁じ得ない。
ここに紹介した二つの事例は、われわれが過去の経験と実績に拘束されがちな欠点をあからさまにし、発想を大きく転換する必要があることを教えてくれた。

 

 

 

 

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